1高齢者の方の集まる場が失われている
私は、父が老年医学の医師だったこともあり、あまり他の職業を考えず医師になったのですが、患者さんの人生の重大な岐路に立ち会える精神科の領域にやりがいを感じ、高校生の時から迷いもなく精神科医を目指していました。父の後を継ごうという気はなかったのですが、たまたま最初に担当したのがアルツハイマー病の患者さんだったこともあり、認知症や高齢者医療を専門とする道を歩んできました。
精神科医としては、臨床現場に出て実際に患者さんに接することと、介護職など他の職種との連携を大切にしています。今も地域包括支援センターのスタッフなどと一緒に仕事をしていますが、新型コロナウイルスの影響を最も感じるのは、デイサービスなど高齢者の方が集まれる物理的な空間が失われたということです。コロナ前はデイサービスに行っていたけれど、コロナを機に行かなくなってしまったという人は一定数いて、それは患者さん本人の心理もそうだし、ご家族が心配して行かせないという場合もかなり増えたと実感しています。
ほとんどの方がワクチンを打ち、それぞれの施設が感染対策をするようになってからも、地域包括支援センターでオレンジカフェなど高齢者の方が集える場を準備しても集まりが悪いようです。仮にコロナ禍が一つの終息を見ても、日本人にとってこの意識はあまり変わらないものなのではないかと思います。